バイブコーディングでコーポレートサイトをリニューアル:実践した10のセキュリティ対策

Growth One 編集部約 12 分で読めます

エンジニアが指示のカードを指さし、点線の枠の中で AI のロボットがサイトの部品を組み立てているイラストバイブコーディング

当社は、コーポレートサイトのリニューアルを、AIと対話しながら開発する「バイブコーディング」で行いました。開発は大きく速くなりました。一方で、AIを悪用したサイバー攻撃は、この1年で目に見えて増えています。2026年10月に公開されたMicrosoftの報告書は、侵入後のデータの持ち出しや認証情報の探索といった攻撃の工程が、AIによって「数日から数分」に短縮されたと指摘しました。この記事では、会社の顔であるコーポレートサイトをAIと一緒につくり直すにあたり、私たちが何を守ったのか、実際に運用している10のセキュリティ対策を紹介します。

この記事でわかること

  • コーポレートサイトのリニューアルを、バイブコーディングで進めた方法
  • AIを悪用したサイバー攻撃の最新動向(2025〜2026年の調査から)
  • バイブコーディングで高まるセキュリティリスク
  • AIに任せる開発で実践している10のセキュリティ対策
  • 安全に開発するための、AIへの指示の出し方

バイブコーディングとは

バイブコーディングとは、AIのコーディングエージェントに自然な言葉で指示を出し、コードの作成から修正までを対話しながら進める開発のしかたです。画面の試作から修正までが会話の速さで進むため、開発の速度は大きく上がります。

ただし、開発が速くなっても、守りは自動では付いてきません。AIは頼まれたものを書くことには長けていても、何を守るべきかまでは判断してくれません。AIの手が速いぶん、誤りも速く広がります。守りは、人が先に設計しておく必要があります。

バイブコーディングで進めたコーポレートサイトのリニューアル

今回のリニューアルでは、次の3つを目標にしました。

  • スマートフォンでも速く表示され、読みやすいこと
  • 社内の担当者が、お知らせやブログの記事を自分で更新できること
  • 事業内容や自社サービスが、初めて訪れた方にも伝わること

進め方は、「人が決め、AIが実装し、人が確かめる」の繰り返しです。目的、使う技術、守るべきルール、品質の基準はエンジニアが決め、ページの組み立てやアニメーション、フォーム、テストまでの実装は、ほぼすべてAIのコーディングエージェントが書きました。できあがったものは、人が実際の画面で確かめ、気になった点を具体的に伝えて直してもらいます。

コーポレートサイトは、会社の顔です。お問い合わせのフォームでは、お客様の名前や連絡先もお預かりします。だからこそ、開発の速さと同じくらい、守りの設計に時間をかけました。

AIを悪用したサイバー攻撃の最新動向(2026年)

攻撃の速度と規模が、AIで一変した

Microsoftが2026年10月1日付で公開した「Digital Defense Report 2026」は、攻撃者がAIを使うことで、侵入後のデータの持ち出し、認証情報の探索、ほかの端末への侵入の拡大といった工程を、数日から数分に短縮していると報告しています。

CrowdStrikeの「2026 Global Threat Report」(2026年2月公開)によると、AIを活用する攻撃者の活動は前年から89%増えました。金銭目的のサイバー犯罪では、侵入から別の端末へ移るまでの時間は平均29分、最も速いものでは27秒でした。生成AIのツールに悪意のある指示を送り込む攻撃も、90を超える組織で確認されています。

被害は、すでに数字に表れている

IBMの「Cost of a Data Breach Report 2026」によると、悪意のある攻撃によるデータ侵害のうち、AIを使ったものは4件に1件にのぼり、その割合は前年から56%増えました。データ侵害1件あたりの被害額の世界平均は499万ドルと、過去最高になりました。

国内でも、情報漏洩は珍しいニュースではなくなっています。東京商工リサーチの調査によると、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は180件、漏えいした個人情報は3,063万人分で、前年から93.1%増えました。原因の64.4%は、ウイルス感染・不正アクセスです。

AIを「使う側」も、狙われている

情報処理推進機構(IPA)が2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれ、3位に入りました。

AIのコーディングエージェントそのものが、攻撃に使われた例もあります。Anthropicは2025年11月、同社のコーディングエージェントが悪用され、世界の約30の組織が狙われ、一部では侵入が成功したサイバー諜報活動を、検知して阻止したと公表しました。報告によると、攻撃者は活動の80〜90%をAIに実行させていました。

AIが書くコードも、安全とは限りません。セキュリティ企業のVeracodeが、脆弱性が生じうる80のコーディング課題を、100を超える大規模言語モデルに解かせた調査では、45%のケースでセキュリティ上の欠陥が含まれていました。

攻撃する側がAIで速く、大規模になっているいま、AIを使って開発する側は、それ以上に慎重である必要があります。

バイブコーディングで高まる6つのセキュリティリスク

私たちは開発を始める前に、AIに任せることで新たに生まれる、あるいは大きくなるリスクを洗い出しました。

リスク 起こりうること 対応する対策
実データの流出 顧客や社員の情報が、AIへの指示に含まれてしまう 6.1
秘密情報の混入 接続情報や鍵が、AIの書いたコードに埋め込まれる 6.2
誤った操作 AIが本番への公開や削除を、判断を誤って実行する 6.3
依存関係の汚染 AIが、存在しない・悪意のあるライブラリを提案する 6.4・6.7
生成コードの欠陥 一見動くが、安全でないコードが紛れ込む 6.5
入力の悪用と情報の露出 利用者の入力が攻撃に使われる、構成が攻撃の手がかりになる 6.6・6.8〜6.10

バイブコーディングで実践した10のセキュリティ対策

ルールの前提は、「AIは間違える」ことです。間違えても、取り返しのつかない事態にならない仕組みを、先につくっておきます。

実データをAIに渡さない

AIへの指示や、AIに読ませる資料に、顧客や社員の実データを含めません。サイトに掲載している自社サービスの画面も、架空の会社名・人名・数値を用意したデモ環境で撮影しました。AIが読む場所に、守るべき情報を置かないことが、最も確実な漏洩対策です。

秘密情報をコードに書かない

接続情報や問い合わせの送り先などの秘密情報は、コードには一切書かず、専用の保管場所で管理しています。AIは、動かすために必要だと判断すると、秘密の値をそのままコードに書くことがあります。ルールで禁止したうえで、変更のたびに差分を確認しています。

戻せない操作は人が承認する

本番環境への公開は、担当者が手動で、複数の確認を経なければ実行できない仕組みにしています。AIが誤って実行しようとしても、そこで止まります。

開発中には、AIツール自身の安全装置が、AIの操作を止めた場面が2回ありました。別のプロジェクトの素材を持ち込もうとしたときと、変更履歴に残っていないフォルダを削除しようとしたときです。どちらも、人が中身を確かめ、問題がないと判断してから進めました。

ライブラリの出どころを確かめる

AIは、存在しないライブラリの名前を、もっともらしく提案することがあります。攻撃者がその名前で悪意のあるライブラリを公開しておく手口は「スロップスクワッティング」と呼ばれています。

当社では、ライブラリを1つ追加するときも、提供元、ライセンス、公開されているソースコードを確かめてから入れています。使っているライブラリは、既知の脆弱性がないことを確認したうえで、最新の安定版に保っています。ただし、新しい版が出ても、周辺の道具が対応していないものは、あえて上げませんでした。「上げられるか」ではなく「上げて壊れないか」を判断するのは、エンジニアの仕事です。

AIのコードをそのまま信じない

AIの「できました」は、そのまま受け取りません。変更を反映する前に、静的解析、型の検査、ブラウザを使った約100件の自動テストをすべて通すことを必須にしています。そのうえで、人が差分を読み、見た目に関わる変更は、パソコン・スマートフォン・ダークモードで実際の画面を撮影して確かめています。

入力の受け口を最小限にする

お問い合わせなど、利用者の入力を受け取る部分は必要最小限にとどめ、守りを何重にも重ねています。入力内容は受け取る側でも必ず検証し、大量の送信や機械的な送信は受け付けません。入力された文字は、表示するときもプログラムとして解釈させません。

外部サービスに頼りすぎない

外部のサービスを1つ使うたびに、費用だけでなく、守るべき範囲と、データが流れる先が増えます。記事の管理なども外部のサービスに頼らず、必要なものだけを使う構成にしました。どのデータがどこへ流れるかを、すべて説明できる状態を保っています。

利用者の入力をAIに送らない

開発の途中で、AIのAPIを使ってお問い合わせに答える機能を実装しました。しかし、指示を巧妙に書き換えて想定外の動きをさせる攻撃(プロンプトインジェクション)や、事実と違う回答をしてしまう可能性、利用者の入力を外部のサービスに送ることになる点を検討し、最終的にこの機能は外しました。便利な機能でも、守りきれないなら載せない。この判断は、AIではなく人が下しています。

攻撃の手がかりを出さない

このサイトに使っている技術の名前や構成、セキュリティの設定は、記事にもページのソースにも書いていません。使っている技術が分かると、その技術の既知の弱点から、攻撃の当たりを付けられてしまうためです。この記事でも、具体的な名前や設定は伏せています。

変更の履歴を追えるようにする

公開前の内容は、パスワードで保護した確認用の環境でだけ確認し、検索エンジンにも載らないようにしています。また、すべての変更には署名を付け、いつ、誰の操作で加えられたかを、後から追えるようにしています。

安全に開発するための、AIへの指示の出し方

セキュリティと同じくらい成果を左右したのが、AIへの指示の出し方です。

前提はエンジニアが決める

配信する環境の制約、費用、記事を更新する人を先に書き出し、そこから構成を決めました。使う技術は、名前とバージョンまで指定します。指定しないと、AIは古い書き方や、プロジェクトに入っていないライブラリを持ち込むからです。

品質の基準は、数字で渡す

「見やすく」「速く」では、AIは判断できません。文字と背景のコントラスト比は4.5:1以上、押せる要素は44px以上、本文は16pxといった基準を、数字で渡しました。表示速度は計測しながら改善し、スマートフォンでの計測値は、100点中67点から98点まで上がりました。

見たままを、範囲と一緒に伝える

伝わりにくい頼み方 一度で直る頼み方
いい感じにして 表示テーマの下に余白がなく、窮屈に見える
スマホで変 スマホで、トップの図形がリンクに重なっている
もっとリッチに 吹き出しが急に出るのではなく、フェードで出るようにして

あわせて、「この部品だけを直す」「ほかのファイルは変えない」「削除する前に中身を見せる」のように、やらないことも伝えます。差分が小さくなり、確認しやすくなります。

決まりはファイルに書いて、毎回読ませる

コードの書き方、守るべきルール、過去につまずいた不具合とその対処は、AIが作業の最初に必ず読むファイルにまとめています。ルールが育つほど、AIの作業は安定し、次に作業する人とAIが同じところでつまずかなくなります。

よくある質問

バイブコーディングで作ったシステムは安全?

AIが書いたというだけで、安全にも危険にもなりません。重要なのは、AIが書いたコードを検査とレビューで確かめる仕組みと、AIに渡す情報や任せる操作を制限するルールがあるかどうかです。

社内データをAIに入力してもよいですか?

顧客や社員の個人情報、取引先の情報などの実データは、入力しないことをおすすめします。検証には、架空のデータを用意して使うのが安全です。

AIが提案したライブラリは使ってよいですか?

そのまま使うのは避けてください。存在しないライブラリの名前を悪用する攻撃もあります。提供元、ライセンス、公開されているソースコードを確かめてから使ってください。

まとめ

  • AIを悪用したサイバー攻撃は、速度も規模も大きく変わった。AIに任せる開発ほど、守りを先に設計する必要がある
  • 実データと秘密情報はAIの手の届く場所に置かず、戻せない操作は人の承認を必須にする
  • AIが提案するライブラリやコードは、そのまま信じず、確かめてから使う
  • 守りきれない機能は載せず、攻撃の手がかりは出さない。この判断は人が下す

バイブコーディングは、エンジニアの仕事を減らすものではありません。エンジニアの仕事を「書くこと」から、「決めること」と「確かめること」へ移すものです。AIを活用した開発や、セキュリティを重視したシステム開発のご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

参考資料